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発売後に語る想いと狙い。『アマツツミ』スタッフインタビュー

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前作『クロノクロック』スタッフによるPurple software最新作『アマツツミ』は、企画発表時から多くのファンから期待され、発売後も高く評価されている。そんな中、メーカー側から電撃姫.comでぜひ作品について語りたいと提案をいただいた。作品を成功を導く、そこにあった狙いとは?

本作の記事はこちら。
■『クロノクロック』スタッフ最新作は言霊が鍵の『アマツツミ』
■言葉で人を操る『アマツツミ』主人公・誠が田舎町で出会う人物は……?

この評価をさらに今後も継続して得られるよう、追求していこうと思います。(石川氏)

誠が初めて泣くシーン、いいですよ。(湯氏)

 

泣かせよう&エロくしよう!
ユーザーに向き合った制作方針

――今回、珍しいことにメーカーさん側から発売後インタビューのお話をいただきました。まずはその理由をお聞かせいただけますか?

石川 ありがとうございます。実は『アマツツミ』の公式サイトにも、発売前に制作スタッフの話を掲載するという広報を行っておりました。

――「アマツツミ開発コラム」ですね。

石川 そうです、その続きとしてぜひインタビュー記事を掲載してほしいと考えたんです。発売前の話は、それまでの反省を活かして『アマツツミ』をこうよくしますという内容でした。今回は発売後のユーザーさんのお声をいただいた上で、さらによくしていこうという今後も含めたお話ができればと思います。

湯 自社のWEBページで行ってもいいのですが……。発売後はさすがに客観的に見てもらえる人も必要だろうと、電撃姫.comさんにお頼みさせていただきました(笑)。

石川 今までは「言わなくてもわかってもらえるだろう」という甘えたところを、『アマツツミ』からは改善しようと動いているのです。今回お願いしたのはその一環です。

――では改めて、『アマツツミ』企画時のお話を発売後の今の視点でお聞かせください。

石川 今回は『アマツツミ』というゲームの企画を考える前に、まず初心に戻って「Purple」というブランドカラーを再確認するところから始めました。これがこれまでの作品との大きな違いですね。

湯 Purpleで制作してきた今までの企画は、外注のライターさん主導でお願いしていました。そのライターさんのもっとも得意とする作風や、やりたいことを表現していただきたくて、企画は雰囲気を指定する以外はかなり自由に進めていたんです。そういう個性を強く発揮できる環境が有効であったことは、『明日の君と逢うために』や『ハピメア』など過去の作品によりわかっていました。

石川 しかし、時代の変化への対応も必要だと考えたのです。作家の個性はもちろん活かしたまま、さらにブランドカラーによる作風やクオリティに統一感があるほうが、今はユーザーさんも安心できますよね。長期的にも、ユーザーさんとブランドや業界の双方の利益になると考えました。

湯 その指針は正直、『クロノクロック』までは曖昧だったんです。作家としての個性が出るということ自体はいいことですが、萌えゲーなのかシナリオ重視なのか、エッチシーンが重視されているのかいないのか、など毎回作品によってバラけてしまっていました。その辺りの反省を踏まえよりよくしようという話が、『アマツツミ』の公式サイトにある「開発コラム」などで語ったことに繋がっていきます。

――読者さんにはPurpleさんの公式サイト内にある「アマツツミ開発コラム」も併せて読んでいただければと思います。
※18歳未満の方はリンク先の閲覧をご遠慮ください。

石川 ありがとうございます。この後は実務的な話になってくるので引き続き湯のほうからお話しします。

湯 はい。そういうブランドカラーを意識し直した上でユーザーさんのお声を聞くと、今「Purple」に求められているのは、「萌えは前提で、シナリオ性を前に出した作品」であり、「克さんのかわいさとエロさ」を活かすことだと考えたのです。そこで企画をお願いする御影さんに、その結論をお伝えしました。

湯 すると「シナリオ性とエッチシーンの両立」に対して、御影さんから提案していただいたのが「1本道のシナリオ」でした。もちろん、従来の「共通ルート→個別ルート」という形でもシナリオ性は出せます。しかし、今回の方針をより明確にするには「1本道」がいいだろうと決定しました。1本道のシナリオ作品経験がある御影さんの、個性を活かすことにも繋がりますね。

湯 さらに、ユーザーさんだけでなくスタッフ内でも作品イメージを固める上で、まず一目で作品の雰囲気が伝わる「イメージボード(※公式サイト「画廊」の上部5枚の画像)」を用意し、それを作品発表の広報としても最初に提示した、という流れになりました。
※18歳未満の方はリンク先の閲覧をご遠慮ください。
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湯 克さんもこういったイメージの強い絵を描くのがうまいので、全キャラ分の「イメージボード」のレイアウトは克さんに切ってもらいました。主人公の「イメージボード」を作ることも含めて、これもいい方向付けになりましたね。

石川 この流れが、発表前には語れなかった企画時の流れになります。

――なるほど。今少し触れていただきましたが、メインスタッフの御影さんと克さんのお話もお聞きしたいと思います。まずは企画の御影さんからお願いします。

石川 作品全体やプレイしたユーザーの反応などを俯瞰できる客観性に驚かされます。別なメーカーさんでディレクターも担当されていた恩恵もあるのでしょうが、なかなかできる人は限られると思います。私自身勉強になることが多いです。

湯 実務面でも、テンポよく読みやすいテキストや、胸を打つシーン描写などは言うまでもないところだと思いますが、「他人に意図を伝える方法・能力」というのが非常に優れていると思います。

――「よい物語を仕上げる」以上の働きをされる方なのですね。

湯 話は少し逸れるのですが、Purpleスタッフはディレクターの私含めほとんどグラフィック関連専攻というのもあり……。御影さんには企画・シナリオ以外の面でも公式サイトなどの広報アイデアにも助言をいただき、大変助かっています(笑)。(企画力のあるスタッフ募集中です!)

――同様に原画の克さんに関してもお聞かせください。

石川 絵の魅力はもちろんですが、構図のうまさに感心させられることが多く、絵を描かない人間にも考えて描いてるのが伝わるレベルだと思います。提案に対する飲み込みも早く、こちらが伝えたこと以上の昇華をしてくれます。なんといってもかわいとエロさをうまく両立できているのが強みですね。

湯 構図取りだけでなく、何よりもエロかわいい(笑)。通常イベントCGの指定などは、進行である私が絵コンテを切ったりすることもたまにあるのですが、克さんに関してはほぼお任せしています。

――通常イベントCG、なのにエロいのが素晴らしいと思います。

湯 作品制作にあたっても自分なりの考えをしっかり持っている方なので、シナリオを読みこんで絵作りのアイデアをあげるなどのモチベーションも高く、いっしょに作っていて楽しいスタッフのひとりです。『アマツツミ』では特に「ほたるルート」のクライマックスあたりに結果が出ています。克さん自身が演出を考えた上でCGを描いてくれたりと、相当頑張っていただきました。

石川 エッチシーンにもこだわりがありますよね。今作のエッチシーンでのシチュエーションは、大部分が克さんから出していただいたりしています。

――そうなると今作のエロさは克さんによる部分が大きいですね。

湯 だからエロかわいい(笑)。

石川 他にも紹介したいスタッフや、音声収録や広報などで多くの外部の方にもご協力いただきました。ですが全員は紹介できないので、さらにまた機会があればですね。

――次に『アマツツミ』という作品そのものについて。特別こだわった点はどこでしょうか?

湯 「シナリオ性」について簡単に触れましたが、より具体的でわかりやすい言葉にすると「泣けるものにしよう」と思いました。それから、従来通り「明るく楽しい学園モノ」という部分からは逸れないように意識しましたね。

石川 こだわりという意味では、「泣けるシナリオ」と一口に言うと簡単でありきたりには聞こえます。しかしすでに多種多様な作品や娯楽が世にあふれている今、その単純さこそがもっとも難しいテーマになっていると思います。だからこそ挑戦することに意義があるとも考えました。

湯 御影さんはユーザーさんのガードが固くなっている以上、「ガードの上から殴るくらいのつもりで」と言っていました(笑)。あとは、始めにお話した「ブランドカラー」や「作品イメージ」をしっかり固めた流れで、それに沿った絵・お話作りだけでなく、BGMやムービー、それらを含めた演出についてもイメージを意識して制作しています。

――作品イメージを固めつつ、そこに合致する物語を丁寧に作り上げていったと。

石川 今はキャラやエッチシーンはもちろん、ストーリーとしてもきちんと読ませるものが求められていると感じます。どれも重要な要素ではありますが、昔よりも、それぞれが高い平均点を出せる作品が全般的に求められている気がします。ごく自然な流れですね。

湯 ご意見で多く目にするものをまとめると、「予想を裏切り、期待を裏切らない作品」になります。石川の言う通りに、すべての要素において平均点以上を求められますが、同時に「ユーザーの皆さんすべての好みに合う作品」というのも現実的には難しいと考えています。

――「もっと物語を」と仰る方もいれば「もっとエロを」という方も出てきますからね、どうしても。

湯 だから諦めるとか、抽象的に努力するという言葉で済ませる訳ではありません。反映したのは、発売前にできる限り作品を知っていただける場を用意した上で、そのご期待に沿えるよう、またそれ以上の作品になるように、ということになります。

石川 プロデュース的に言うと、今回の場合なら作品のイメージを「イメージボード」「開発コラム」「体験版」で提示し、「ゲーム本編」でその予想を超える、という形ですね。

――体験版公開時に「アマツツミ体験版感想ツイートキャンペーン」を行っておりました。その反応はいかがでしたか?

石川 よい反応が多かったと思います。本作はそこまでネタバレは気にせず、体験版でも踏み込んだところまで露出しました。その結果に「感想ツイートキャンペーン」という具体性を加えることで、続きが気になるという訴求力を満たすことでの口コミに繋がったと思っています。

湯 そして、ツイートキャンペーンで制作側も感想を確認しやすく、制作中に気付けなかった部分、「なるほど」と思わされた部分など、様々な感想を見ることができました。キャラクターのかわいさ、エッチシーンについて、純粋にシナリオへの憶測など、実に多くの感想をいただき、さらにそこからユーザーの皆さんの熱がこちらにも伝わってきました。

――私も発売前にプレイしましたが、主人公の言動が一般的な純愛ゲームの主人公と異なっていて驚きました。そこへの反応もあったのでは?

湯 主人公に個性を強く持たせる、それから序盤から複数のヒロインとのエッチシーンを入れる、といった実験的な作りは、プレイする人によって主人公の倫理観に拒絶反応が出てしまうと思っていました。しかし感想を見る限りは、むしろ想定よりは圧倒的に少なかったのが逆に意外で、それを知れたのはキャンペーンのおかげですね(キャラ立てとシナリオがそれを飲み込めるだけのものにできた、という面もあるでしょうけれど)。

石川 今年6月頃、ショップ向けの販促品のひとつとして「体験版感想キャンペーン」のツイートを織り込んだ『アマツツミ』のポスターを作成し、ショップ様に貼っていただきました。こちらも面白い試みとして好評だったようです。

――さてその後発売を迎えて、ユーザーさんの反応はいかがでしたか?

石川 前作での様々な意見を加味した上での本作ですが、概ね評価に繋がったのではないかと思っています。

湯 体験版に引き続きよい評価が多くてありがたいです。また、今まで話していた自分たちの考えと比較しても、大きなズレなどはなかったことも確認はできました。

石川 もちろん、そうなるように努力していたことですが、よかったと安心しました(笑)。

湯 「エッチシーンはしっかりエロく!」という目標もあったので、そこについてご満足いただけているようでなによりです(笑)。

――狙いがきれいにハマったわけですね。本作が評価を高く受けた大きな要因はどこにあったとお考えですか?

湯 一番の要因となると、「体験版で泣ける」「大詰めでもっと泣ける」という作りにできたところだと思います。「泣かしてやろう」がうまくハマりました(笑)。

――ガードの上から殴った結果ですね(笑)。

湯 もちろん、それはシナリオだけの話ではありません。絵やBGMや演出、広報として見せていったものなどのすべての要素を含めた「作品の作り方」「作品内容の周知」が、完璧ではないにせよ機能してくれた、と考えています。この辺りはまだ伸ばせる部分なので、今後も意識していきたいところです。

石川 評価を得たとお話ししましたが、だからこそこの評価をさらに今後も継続して得られるよう、追求していこうと思います。

――今だから言える、思い入れの強い箇所についてお聞かせください。

湯 大詰めの「ほたるルート」は渾身の力を込めて作りました。テキスト、絵素材、演出、役者さんの演技などなど、すべて全力以上だったと言えるかもしれません。単純にイベントカット数も当初の予定より7~8カット増やしていたり……と。ほたるは尊いです(笑)。
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――プレイする際「ここに注目してほしい!」といったポイントはありますか?

湯 今お話しした「ほたるルート」にはなるのですが。それ以前の、こころ、響子、愛のルートを通じて「主人公・誠が色々な感情を覚えていく」というのを追っていくのは、全編通して見ていただきたいところになります。誠が初めて泣くシーン、いいですよ。

――最後に次回作についてお話しできる範囲でお願いいたします。

石川 すでに制作に取りかかっております。主要スタッフの名前をお伝えしてもよいのですが……。それこそ、それを発表するプロデュースにおいても最適な機会を作りたいと思います。お披露目できる時期は来年になると思いますが楽しみにしていてください。

湯 『アマツツミ』ではありがたいことにご好評いただきましたが、油断も慢心もせず。それに負けないもの、さらによりよい作品にしたいと考えています。今後ともPurple softwareをよろしくお願いいたします!

――新作発表は来年、どういった発表になるのか私も楽しみです!

製品仕様

タイトル:アマツツミ
発売日:発売中
価格:9,800円(税別)
ブランド:Purple software
ジャンル:言葉が紡ぐ、絆のADV
年齢制限:18禁
メディア:DVD-ROM
原画:克/月杜尋/鳥取砂丘(SD)
シナリオ:御影/他

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